特定調停を利用して、住宅ローンの返済を楽にしたいと考えている人もいるのではないでしょうか。
ただ、特定調停をすると家を手放さなくてはいけないのか、またローンを組むことができるのかといった疑問や不安を感じることもあるでしょう。
そこでこの記事では、特定調停にまつわる住宅ローンの実態について解説していきますね。
この記事を読んで、特定調停にまつわる住宅ローンの疑問や不安を解消して、ローン返済時の役に立ててください。
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【おさらい】特定調停とは
まず最初に、特定調停の基本についておさらいをしていきましょう。
特定調停とは、債務者と債権者の間に裁判所が介入することで話し合いの場を設け、調停員と呼ばれる第三者が中立を図ることで和解の方向へ持っていく方法です。
調停員が話を主導してくれるので、債務者は債権者に直接交渉する必要がないため、口論になることを避けられます。
また、弁護士や司法書士に依頼せずに自分で手続きができることから、費用を抑えられるメリットもあります。
特定調停と住宅ローンの関係性
特定調停をすると、借金で将来発生する利息をカットできることから、借金総額を減らして返済を進めていくことができます。
通常、住宅ローンの返済額はそのままにして、住宅ローン以外の借金を特定調停して返済していく方法になります。
これらの情報を踏まえて、特定調停をする人に向けて特定調停の流れを説明すると、次の通りです。
- 【裁判所窓口へ】管轄の簡易裁判所の窓口に相談
- 【申立書の作成】窓口または各簡易裁判所のホームページにある「特定調停申立書」に必要事項を記入して提出
- 【必要書類の準備】財産状況等明細書、権利関係者一覧表、特定調停申立書、収入が分かる源泉徴収票や給与明細書、不動産の登記簿謄本、ローン利用時の契約書などを用意
- 【裁判所にて申立て手続き】必要事項を記入した「特定調停申立書」を裁判所に提出
- 【裁判所から債権者に連絡】申立てが認められると、裁判所が債権者に取り立て中止の連絡をする
- 【債務者の呼び出し】裁判所への出廷日時の連絡が債務者に届く
- 【裁判所出廷(1回目)】調停員と打ち合わせを行い、債権者の意向や借金の金額、毎月の返済額などを相談する
- 【裁判所出廷(2回目)】債権者も裁判所に呼ばれて調停手続きが行われる
- 【調停調書の作成】無事に調停がまとまると、調停調書を作成し特定調停が終了する
注意して欲しい点は、作成された調停調書に反して債務者がローン返済に遅れてしまうと、債権者はいつでも強制執行に移せるということです。
強制執行に移行してしまうと財産が差し押さえられてしまいます。そのため、調停調書に反して返済に遅れないようにしましょう。
特定調停をしたら、住宅ローンで購入した家はどうなる?
特定調停をしたら、住宅ローンで購入した家を手放さなくてはいけないのか不安な人もいるでしょう。
安心してください、特定調停をしても家は手放さずに済みます。通常、家を残したまま住宅ローンを返済し、住宅ローン以外の借金を特定調停して返済していく形になります。
ちなみに、家を手放さなくてはいけない場合は、強制執行による差し押さえが実行された時や自己破産をした時、家に設定されている抵当権が実行された時です。
抵当権とは、住宅ローンを利用する時に金融機関が家や土地に設定した権利のことを言います。
住宅ローンを返済できなくなったときには、銀行は抵当権を実行し、家を競売にかけることで借金を確実に回収します。
特定調停で住宅ローンの返済額を必ず減額できるわけではない
特定調停を利用しても、住宅ローンの返済額を必ずしも減額できるわけではありません。なぜなら、ほとんどの場合は債権者が住宅ローンの減額交渉に応じないからです。
というのも、住宅ローンの返済が滞ったときに、債権者は抵当権を実行してすぐにでも家を売却して、住宅ローンを回収できるからです。
実際は、特定調停によって住宅ローンは減額されず、返済期間の延長などが行われることが多いです。
特定調停を利用すると、新たに住宅ローンを組みにくくなる
特定調停を利用すると、返済額の減額や返済期間の延長などが行われ、返済負担を楽にできるようになります。
ただし特定調停を利用すると、借金の返済が滞った情報が事故情報として信用情報機関に登録されてしまうのです。そのため、新たに住宅ローンを組みにくくなります。
また住宅ローンだけでなく、自動車ローンや教育ローンなどが組みにくくなったり、クレジットカードの利用ができなくなったりします。
特定調停をすれば、信用に傷が付くことになるので、安易に利用できるものではありません。
特定調停後でも、一定期間を過ぎれば住宅ローンを組める
特定調停を利用すると新たに住宅ローンが組みにくくなることから、「一生、ローンを組めなくなるのでは…。」と不安に感じる人もいるかと思います。
安心してください。特定調停後でも、また住宅ローンを組むことは可能です。信用情報機関に記録された事故情報は、5年〜10年経過すれば抹消されます。
そのため、事故情報が抹消された後、また新たに住宅ローンを組むことが可能です。
ただし、記録が抹消される期間は特定調停をした借金を完済してから5年〜10年経過した後になります。特定調停をした後からの期間ではない点に注意です。
信用情報機関に記録された事故情報を確認したい場合は、開示請求を行うことで記録が残っているかどうか確認できます。開示請求を行う時には、手数料として1,000円かかります。
各信用情報機関の開示請求に関するページの各リンクを貼っておきますので、確認してみてください。
特定調停後、住宅ローンの審査を突破するための方法
特定調停後、信用情報機関に登録された事故情報は、特定調停をした借金を完済してから5年〜10年経過すれば消滅します。
ただし、金融機関は事故情報の記録を抹消していないことが多く、一定期間を過ぎても記録が残り続けている可能性が高いのです。そのため、事故情報が消えてもまた住宅ローンを組むことが難しいです。
ただ、次に挙げる3つの方法を実践すれば、住宅ローンの審査を突破しやすくできます。3つの方法とは、次の通りです。
- 【頭金を用意する】物件価格の2割の頭金を用意すれば、金融機関から評価され、審査を突破しやすくできる
- 【同じ金融機関やグループ企業は利用しない】例を挙げると、プロミスを利用していた場合は、SMBCグループの企業の利用は避けるなど
- 【フラット35を利用してみる】民間金融機関と国の機関である住宅金融支援機構が提携している特殊な住宅ローンのため、比較的審査が突破しやすい
これら3つの方法を実践すれば、特定調停後でも住宅ローンの審査が突破しやすいです。まずは、3つの中から実践しやすい方法を1つ検討してみてはいかがでしょうか。
特定調停を利用する事態になる前に、早めに金融機関に相談しよう
特定調停を利用すれば、毎月の返済額を減らせたり、返済方法を変えたりできます。
一方で、特定調停を利用すると金融機関などに事故情報が記録されてしまい、新たにローンが組みにくくなります。最悪の場合、家に設定された抵当権が実行され、家が競売にかけられてしまうのです。
もし、住宅ローンやその他のローンの返済が滞りそうだと予測できるなら、早めに金融機関などに相談しましょう。
毎月のローン返済が滞る前なら、金融機関は返済条件の変更に応じてくれます。相談しても解決策が他に見つからなかったときには、特定調停の利用を検討してみましょう。
住宅ローンにまつわる特定調停に困る時に利用して欲しいサービス
ここまで、特定調停にまつわる住宅ローンの実態に関して説明するなかで、様々な疑問や不安を感じた人もいるでしょう。
そんな人は、日本最大級の法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」を利用してみてはいかがでしょうか。
「弁護士ドットコム」では、弁護士に無料で相談できる「みんなの法律相談所」というサイトで、法律に関する相談をQ&A方式で弁護士が応じてくれます。
さらに、各分野に精通している弁護士を検索できるサイト、「弁護士検索」も無料で利用できます。特定調停に関する悩みごとがあるなら、ぜひ利用してみてください。
まとめ
ここまで、特定調停にまつわる住宅ローンの実態について解説していきました。
特定調停は、毎月の返済を楽にできる可能性がある一方、必ずしも返済額を減らせるわけではなく、債権者に合意を強制できません。
また注意点として、特定調停を利用すると事故情報が信用情報機関や金融機関に記録されてしまい、新たに住宅ローンなどが組めなくなることもあります。
特定調停をした借金を完済してから5年〜10年が経過すれば事故情報が消え、また新たに住宅ローンを組める可能性もあるので、諦めずに方法を模索したいところです。
この記事の内容を参考にして、特定調停と住宅ローンにまつわる疑問や不安を解消していきましょう。
できれば特定調停に踏み切る前に、早めに金融機関でローン返済に関する相談をしてみてください。返済に関する条件の変更に応じてくれるかもしれませんよ。